不妊治療の基礎情報
こんにちは。すえぞうです。
本日はこれまで当ブログでご紹介した不妊治療関連の基礎情報を含めた不妊治療関連情報のご紹介記事となります。
目次
男性不妊と女性不妊について
不妊の原因には男性側の男性不妊、女性側の女性不妊がありますので、まずはそれぞれの不妊症について触れさせて頂きます。
男性不妊
男性不妊は大きく以下の4つに分類されます。
- 造精機能障害
- 精液の異常
- 精子の通り道の障害
- 性交・射精の障害
上記4つの障害それぞれについて以下に簡単にご説明いたします。
造成機能障害
精子を造り出す精巣の機能そのものに異常があるケースです。精巣での精子形成等に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり、奇形率が高くなったりして受精率が低下しますが、このような場合が造成機能障害とされています。男性不妊症の原因の約90%がこの障害と言われています。
造精機能障害による精子の異常には下記のような種類があります。
- 無精子症:精子が全くない状態です。
治療:精巣や精巣上体に精子が存在していれば、顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することが出来るとされています。
- 乏精子症:総精子数が3,900万匹未満(※1)の状態です。
治療:精子の数が基準を少し下回る程度であれば、タイミング法、さらに精子の数が少ない場合は、人工授精、体外受精、顕微授精等。
- 精子無力症:精子の運動率が良くない状態です(前進運動率が32%未満のもの)
治療:精子の状態により人工授精や顕微授精等。
(※1)正常な精液の状態は以下の基準とされています。
1回の射精量 | 1.5mL以上 |
総精子数 | 3,900万匹以上 |
精子濃度 | 1,500万匹/mL以上 |
総運動率 | 40%以上 |
前進運動率 | 32%以上 |
生存精子率 | 58%以上 |
正常形成精子の割合 | 4%以上 |
なお、以前の記事にも記載しましたが、精子の検査を一度受けただけでは正確なデータは得られません(管理人は1度目の検査でかなり酷い精子無力症との結果がでましたが、2度目の検査では問題ありませんでした)。体調等にもよるので、クリニック内で新鮮な精子を採取し検査されることをお勧めします。
精液の異常
前立腺等に炎症があると、その原因となっている細菌により精子の運動が妨害され不妊の原因になるとされています。
精子の通り道の障害
精子を送る管が炎症等で詰まったり、先天的に欠損している障害です。
性交・射精の障害
勃起不全(ED)や射精不全などの機能的障害です。
女性不妊
女性不妊の主な原因は以下のものとされています。
1.排卵障害
2.卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)
3.子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇形)
4.頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)
5.免疫因子(抗精子抗体など)
6.その他
上記6つの原因それぞれについて以下に簡単にご説明いたします。
排卵障害
排卵障害とは、卵胞が卵巣の中で発育しない、または発育しても排卵が起きない状態をいいます。排卵障害の主な原因には以下のようなものがあります。
- 高プロラクチン血症:
出産後の授乳期に下垂体から分泌されるプロラクチンというホルモン(排卵を押さえ、授乳期に妊娠が起きないようにする働きがあるホルモン)が授乳期でもないのに大量に分泌されるために排卵が起きにくくなる状態です。
治療:プロラクチンの分泌を押さえる薬の使用等
- 多嚢胞性卵巣症候群:
多くの嚢胞が卵巣に生じるケースで、嚢胞とともに卵巣の表面が硬くなり排卵が妨げられる状態です。
治療:排卵誘発剤の使用、手術等
- 下垂体性無月経:
視床下部や下垂体の異常でFSH(卵胞を発育させるホルモン)やLH(排卵を起こさせるホルモン)の分泌が悪いため、卵巣内の卵胞が発育しない状態です。ダイエットや精神的な悩みが原因でこの状態となることもあるとされています。
治療:排卵誘発剤の使用、精神的なストレス等悩みの原因解明と解消等
- 卵巣性無月経:
卵巣そのものに異常があり排卵が起きない状態です。
治療:排卵誘発剤の使用、ホルモン療法等
卵管因子
クラミジアなどの感染症や子宮内膜症により卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着が起こり卵管に卵子が取り込まれにくくなる状態です。
子宮因子
子宮筋腫があると子宮内腔が凸凹になるなどして受精卵の着床が阻害されると考えられています。子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなるともいわれています。また、子宮内膜ポリープや子宮の奇形(先天的に子宮が変形している状態)も不妊の原因と考えられています。
頸管因子
ホルモンバランスの乱れなどにより、分泌される粘液量が少なくなるなどして、精子が子宮内へ貫通しにくくなる状態です。
免疫因子
何らかの免疫異常で抗精子抗体(精子を障害する抗体)が頸管粘液内に分泌され、精子の通過を妨げる状態です。
原因不明不妊
検査を行なっても、明らかな不妊の原因が見つからないケースです。原因不明不妊は不妊症の1/3を占めるともいわれています。クリニックによっては、ピックアップ障害(卵巣から排卵された卵子を卵管の先にある卵管采がうまくキャッチできない症状)がこの原因不明の不妊の主たるものと考えられているところもあります。
また、上記のほか、糖尿病などの疾患、やせすぎ、肥満、ストレス、たばこなども不妊に関連があるとされています。
不妊の原因を突き止める検査を終えた後は、いよいよ治療の始まりです。ご参考までに以下に不妊治療のステップアップ療法についてご紹介させていただきます。
不妊治療のステップアップについて
不妊不妊治療には大きく分けて以下の4段階のステップがあると言われています。
- タイミング法
- 人工授精(AIH)
- 体外受精
- 顕微授精
それぞれのステップの概要は以下の通りです。
①タイミング法
タイミング法とは基礎体温などにより排卵日を予想した上で夫婦関係をもち妊娠する治療法です。排卵周期は基礎体温やホルモンの量、超音波検査による卵胞の大きさなどをみてタイミングを指導します。
月経終了⇒卵胞が徐々に大きくなる⇒排卵という流れの中で、排卵直後にタイミングよく精子が待ち受けていると受精の可能性が高いらしいです。一般的には5周期行っても結果がでない場合は次のステップへの移行が検討されるようです。
(メリット)
・最も自然な不妊治療法で体への負担がない
・費用も高額でない
(デメリット)
・決められたタイミングでセックスするのは夫婦ともにストレスになる
②人工授精(AIH)
人工授精(AIH)とは排卵日にあわせて精子を採取し人工的に子宮の中へ精子をおくる方法です。
具体的には夫がマスターベーションで採取した精子を遠心分離機にかけて洗浄、濃縮し選ばれた精子を排卵日に合わせ子宮内部に注入する治療法です。簡単にいうと、子宮までの到達距離を縮めるためのお手伝いです・・・
タイミング法で妊娠にいたらない場合のステップアップにAIHを選択される夫婦が多いようです。単に精子を送る手伝いをするだけなので「受精」ではなく「授精」と表記されるらしいです。
おりものの状態が良くなく、子宮の中にうまく精子をとりこめない方や、精子の運動率が低い場合などに有効で、妊娠する確率は10%程度といわれています。
(メリット)
・比較的容易に出来る治療法であり、ある程度の妊娠率を確保できるので繰り返し治療しやすい
・スピーディーに行え、ほとんど痛みのない治療である
(デメリット)
・自由診療なので保険は使えない
・排卵誘発剤を使う場合、多胎やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりやすい
③体外受精及び④顕微授精
卵子をとりだして受精させ、受精卵を子宮に戻す方法です。
具体的には、
排卵誘発剤の内服薬や注射を行い複数の卵子を体外に取り出す⇒卵子と精子を培養容器内で受精させる⇒受精卵を子宮に移植
という流れで進みます。対外受精と顕微授精の違いは受精方法のみで、対外受精が卵子に精子をふりかけるだけなのに対し、顕微授精は一匹の精子を1個の卵子につきさして受精させます。
AIH後のステップアップや、卵管機能がよくない場合、または精子に問題がある場合に体外受精が行われるようです。クリニックによっては、不妊の症状がみられた時点で最初から対外受精を勧めるところもあります。
妊娠率は平均で25%、医療費は保険がきかない為20万~50万程度と高額です。顕微受精の場合は5万程度プラスされます。
(メリット)
・卵子と精子が確実に出会うため人工授精より妊娠率は高め
(デメリット)
・体に負担がかかる
・保険がきかず高額
不妊治療を検討される場合、上のいずれかのステップから始められるかと思います。
タイミング→人口授精→体外受精へとステップアップされる方も多いかと思いますが、必ずしもこの順番で進めたほうがいいとは限りません。高齢で不妊治療に取り組まれる場合は、不妊治療の残りの期間が限られているということもあり費用や現在のお身体の状態も勘案し検討されたほうが宜しいかと思います。