資産運用: 何に投資する?


今回は資産運用に関する記事です。

資産運用については、シリーズもので今後更新していこうかと考えていますが、まずは導入の記事として投資対象となり得る資産について、資産別の概要、保有するメリット・デメリット、投資の際に注意すべきポイントについてご紹介させて頂きます。

資産別のリスク・リターン

資産別のリスクとリターン………なんじゃそりゃ……という方もいらっしゃるかもしれませんが、証券等への投資を行う上で投資対象資産別のリスク・リターンの関係は重要と思われますので、まずはイメージ図を紹介したいと思います。

下図の縦軸が対象資産のリターン、横軸がリスクとなります。

また、投資対象の資産は株式、債券、為替に不動産と色々ありますが、ここでは、年金、投資信託運用の世界で伝統的資産と言われる4種類の資産(国内株式、国内債券、外国株式、外国債券)と預貯金(国内、海外)のリスク、リターンとおまけでJ-REIT、FX及び金融先物等先物取引のリスク、リターンのイメージ(※1)を記載しました。

【資産クラス別のリスク・リターンの関係】

(※1)ここでご紹介しているプロット図はあくまで各資産クラスのリスク、リターンイメージ図です。本来であれば、各資産毎に一定期間のリターンと標準偏差を算出しプロットすべきですが、簡略化のため、凡そのイメージを図示しています。

 

ご覧の通りリスク・リターンの関係は右肩上がり(正の相関)で、リスクが高いほどリターンも高いという関係となります。高い収益をあげたければ、紐付くリスク(資産価値が下がるリスク)も高いということですね……

資産別の概要

それぞれの資産毎で保有するメリット、デメリットも異なります。

投資を検討される際、どの資産クラスにいくら投資するかは一番の悩みどころかと思いますので、各資産クラス毎の概要とメリット、デメリットを以下にまとめてみました。

円預金

まずは、円建ての「預貯金」です。国内の預貯金であれば、預けている金融機関が破綻しない限り、リスクゼロとなります。つまり金融機関が破綻しない限り、安心して保有できる安全資産だと言えます。

ただし、ご存知の通り現在の市中金利は限りなくゼロに近い状態ですので、リターンもほとんどありません。定期預金に100万円預けていたとしても、預金利息0.01%として年間の利息は100円にしかなりません……確定拠出年金で拠出対象に選ぶのであれば、リスクなしで大きな税務メリットを得ることができるのですが、純粋な投資対象としては魅力に欠けるところがあるかもしれません。

メリット:

  • 原則、元本が保証されるリスクフリーの安全資産
  • 過度の物価上昇等がない限り資産価値が毀損することがない

デメリット:

  • 金融機関が破綻した場合、1,000万円までしか保護されない
  • 金利水準が非常に低い経済環境では、利息がほとんどつかない

 

外貨預金

「外貨預金」はその名の通り、国内の金融機関等を通じて外貨の預金口座を保有するという金融商品です。

マイナス金利を導入している欧州を除き、他国の金利水準は日本と比較し高いため、外貨預金を行うことで一定の利息収益を得ることができます。一方で、為替変動により資産価値が大幅に毀損するリスクもあるため、円預金と比較するとリスクが高い商品とも言えます。

メリット:

  • ユーロ等欧州の通貨を除き適用される金利水準が円預金よりも高い

デメリット:

  • 為替リスクを伴うため、円高により資産価値が大幅に毀損する可能性もある

 

国内債券

日本国内の発行体が国内で円建てで発行した国債、地方債、社債等が国内債券となります。個人向け国債等国債であれば、発行日から償還日まで保有すれば、発行母体がデフォルト(債務不履行)しない限り元本割れなしのリスクフリー資産です。但し、時価で売買する場合は、金利の変動により価格も変動しますので、金利上昇時は価格下落のリスクがあります(個人向け国債の場合は元本は変わりませんが途中換金時はペナルティとして一定の手数料がかかります)。

また、利付債であれば、定期的に利子を受けとることができます。

債券価格は金利が変動すると変動しますが(金利が上昇すると価格は下落)、そのほか需給面での影響として、株価下落局面では、相対的に安全資産である債券に資金が移動する(機関投資家等が株式を売却し債券を購入する)ため、価格が上昇します。

個人の運用対象としては、個人向け国債又は社債か国内債券の投資信託の購入となるかと思いますが、投資信託は時価が変動しますし、公社債も償還日前の売却は元本割れのリスクがあるので注意が必要です。

メリット:

  • 償還日まで保有すれば、元本割れのリスクがない(投資信託は時価変動による元本割れあり)
  • 安定したインカムゲイン(利息収入)が得られる

デメリット:

  • 投資格付が低い債券はデフォルトリスクを伴う
  • 償還日前の売買は元本割れのリスクがある

 

外国債券

外国債券は、発行体、発行市場、通貨のいずれかが海外である債券です。償還日まで保有すれば、元本が保証される点やデフォルトリスクを有する点など債券としての特性は国内債券同様ですが、取引通貨が外貨となるため為替変動のリスクがあります。

そのため、償還時又は売却時に円高だと元本が大幅に毀損する可能性があるため投資の際には、注意が必要です。

一方で、発行通貨、発行体によっては相対的に高い利率で利息を受け取ることも可能です。例えば、政策金利(2017年6月時点)が6.25%で市中金利も高いインドルピーは現状、日本国内で個人での外貨預金はできませんが、インドルピー建債券の購入は証券会社等を通じて可能です。

もちろんいくら利率が高くても、為替リスクがありますので、今後円高に振れれば受け取る利息以上に元本が減少するリスクはありますが、為替が安定していれば、投資対象としては魅力的と言えるかもしれません。

メリット:

  • 発行体によっては、国内債券よりも利率が高く相対的に高いインカムゲインが得られる
  • 円安に振れれば、為替差益を得られる

デメリット:

  • 受取通貨が外貨となるため、円高に振れれば為替差損により元本割れのリスクがある
  • 新興国債券等相対的に投資格付けが低い債券はデフォルトリスクを伴う
  • 償還日前の売買は元本割れのリスクがある

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国内株式

国内市場で取引される株式が国内株式です。個人で投資対象となるのは東証等に上場している上場株式となります。投資の際は、個別銘柄を自身で選定して購入するか、国内株式を投資対象とする投資信託に投資することになるかと思います。業績や株価に影響するニュース等で株価が大きく変動することもあり、預貯金や債券等に比べると投資リスクは高めですが、その分高いリターンも期待できます。

銘柄別に固有のリスクも存在します(例:輸出企業は円高になると業績も下振れするので株価下落要因になる等)ので、個別銘柄に投資する場合は、銘柄の特性を十分に把握し投資する必要があります。

また、株式を保有していれば年2回など定期的に配当金を受け取ることが可能ですが、債券等の利息とは異なり、配当を分配するかは発行企業の任意となりますので、必ずしも配当を受け取ることができる訳ではありません。

メリット:

  • 株価が上昇すれば大きなキャピタルゲイン(資産価値上昇による売却時の利益)を得ることができる
  • 企業によっては、配当の他に商品券等独自の株主優待がある
  • 株主総会に参加すれば、粗品として企業独自のお土産がもらえる企業もある

デメリット:

  • 不正会計、業績悪化等個別要因により大幅に株価が下落することがある
  • 景気変動の影響を受けやすく景気後退時には株価が下落する傾向にある

 

外国株式

株式としての特性は基本的に国内株式同様ですが、取引通貨が外貨となるため為替変動リスクがあります。

管理人が投資を始めた20年ほど前は、国内市場に上場している銘柄を除き海外の個別銘柄を取引することは出来なかったと記憶しているのですが、先日久しぶりに証券口座を新たに開設し外国株式の項目を確認したところ、今では米国どころか、中国、韓国、ロシア、ベトナム、シンガポール等の銘柄も国内の証券会社を通じて取引が可能なようですね!ここ10年以上株式投資から遠ざかっていたので非常に驚きです。

メリット:

  • 株価が上昇すれば大きなキャピタルゲイン(資産価値上昇による売却時の利益)を得ることができる
  • 円安に振れれば、為替差益を得られる

デメリット:

  • 不正会計、業績悪化等個別要因により大幅に株価が下落することがある
  • 受取通貨が外貨となるため、円高に振れれば為替差損により投資元本が大幅に毀損する可能性がある

 

J‐Reit

REITとは、「Real Estate Invesment Trust」の略称で、不動産投資信託を意味します。

REITはもともとアメリカで誕生した制度ですので、J-Reitとは日本版不動産投資信託といわれるものです。多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品となります。

メリット:

  • 直接投資するよりも少額で不動産に投資できる
  • 複数の不動産に分散投資できる
  • 分配利回りが3-5%と他の金融商品と比べ相対的に高水準
  • 不動産価格は物価に連動する傾向があるためインフレに強い

デメリット:

  • 物件の価値の低下などにより、価格や分配金が変動する可能性がある(※2)
  • 上場廃止になるリスクがある
  • 金利の変動により価格や分配金が変動する可能性がある

(※2)不動産の価格の上昇や下落は、ファンドの基準価額に直接影響を与えませんが、保有している不動産の価格の下落を嫌気して、投資家がその不動産投資信託の売却に動くことになれば、ファンドの基準価額は下落することになります。

 

FX、金融先物取引

最後にFXとその他日経225先物等金融先物取引についてのご説明です。最初の図形に示したように個人が取引できる金融商品としては最もリターン、リスクともに高い商品となります。

まず、FXですが、FXとは外国為替証拠金取引(Margin Foreign Exchange Trading)の略で、その名の通り証拠金(保証金)を業者に預託し、主に差金決済による通貨の売買を行なう取引をいいます。

外国為替証拠金取引では、レバレッジを利用することにより、証拠金以上の外貨を取引することができますが、レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まります。

一方、日経225先物等先物取引は、あらかじめ定められた期日(満期日)に特定の資産(原資産)を、あらかじめ決められた価格で売買する契約となります。 原資産が実体のないもの(日経225先物であれば、日経平均株価(株価指数))であるため、決済はすべて差金決済となります。

FXも日経225等金融先物も短時間の値動きが激しく、様々な指数、経済情勢、政治情勢の変動により価格がオーバシュート(突然跳ね上がったり下がったりする)することが頻繁にあるので、非常にリスクが高く投資に際しては十分に注意し、保守的な投資・運用を心がける必要があります。

また、取引形態が現物でなく差金決済という点に注意が必要です。

上記、株式、債券等であれば、最悪、投資資産がゼロになればいい話ですが、FX等は差金決済ですので、価格変動によっては、投資元本を大きく上回る証拠金を差し入れる必要がでてくる可能性があります。投資元本がゼロどころか破産につながるほどの負債を負う可能性もあるので投資の際には十分な注意が必要です。

メリット:

  • 少額の投資で大きな利益を得ることがある

デメリット:

  • 利益が期待できる反面、損失が預託した証拠金を超え、さらなる証拠金を請求されることもある。
  • 様々な指数、経済情勢、政治情勢等の変動により価格が乱降下し、非常に大きな損失を被る可能性がある
  • 短期間に大量の注文を出した際は、希望した金額で取引が成立しないリスクがある

 

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投資の際に注意すべきポイント

最後に、管理人が考える投資の際に注意すべきポイントについて何点か触れたいと思います。

①リスク許容度

上でご紹介したいずれの資産に投資する際にも注意すべき点は、自身のリスク許容度を把握し、決めておくことです。

ここでいうリスク許容度とは、自己資産のうちいくらまでなら投資にまわせて、どのくらいの損までなら許容できるかということです。

リスク許容度は、個人の年齢、家族構成、年収や現在の資産残高によって人それぞれだと思いますが、一般に年齢が若く、年収が高い人ほどリスク許容度は高めとなる傾向にあるようです。

また、個々人の性格もリスク許容度に影響し、いくら多額の資産があっても保有資産が目減りすることに抵抗がある方はリスク許容度も小さい傾向にあるようです。

大切なことは、自身の年齢や家族構成、将来のイベント、キャッシュアウトフロー(結婚、子育て、退職後の生活等に当てる資金の支出)を考慮し、いくらまでなら投資できるかを保守的に決定することだと思います。

投資に回せる資金は人それぞれかと思いますが、基本的な生活資金や保険、将来必ず必要となる資金の貯蓄分を除いた額を投資に回す資金とすべきで、投資余力がなければ、無理な投資は一旦見合わせたほうが宜しいかと思います。

 

②投資対象とする資産クラス

では、仮に投資余力があったとして、上で紹介したどの資産に投資したほうが良いのでしょうか?

…これもリスク許容度と関連しますが、上記でご紹介したそれぞれの資産クラスは、リスク、リターンの特性もそれぞれ異なりますので、現在の家族構成や年齢、年収等に応じて許容できるリスクを有する資産に投資することを考えたほうが良いのかな…と管理人は考えます。

その上で、リスク許容度内で投資できる資産クラスの中で、外部環境(為替相場、金利、地政学的リスク、各種経済指標、社会的要因、技術革新等)や流動性(買いたいときにすぐに買えるか(売り手がいるか)、売りたいときにすぐに売れるか(買い手がいるか))、将来の業績や格付け等々を勘案し、自分の投資スタイルにあったものを選ぶ…という形であれば、保守的に自分にあった商品、銘柄を選ぶことができるのではないでしょうか。

 

……と、長くなりましたが、以上、資産毎の概要、メリット・デメリット、投資の際に注意すべきポイントについてご紹介させていただきました。皆様の投資の際のご参考になれば幸いです。

すえぞう

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